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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社スタジオジブリ 代表取締役プロデューサー 鈴木 敏夫

仕事は公私混同でやったほうがいい

株式会社スタジオジブリ 代表取締役プロデューサー 鈴木 敏夫

いまやハリウッドにまでその名を轟かせているスタジオジブリ。黒澤明監督の亡き後、ハリウッドで最も尊敬されている日本人監督は宮崎駿なのだと言う。そのジブリも最初から順調だったわけではない。『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、評論家の高い評価とは裏腹に、作品を出すごとに興行収入は減り続けた。なぜ作品は素晴らしいのに、客が入らないのか。ちゃんと映画の宣伝をしているのか。そんな疑問を持った鈴木敏夫は、大企業を巻き込み、映画の公開前に大々的に宣伝をする手法に打って出る。これがジブリ伝説の誕生である。『千と千尋の神隠し』では、映画館に2350万人を集め、国内最高の304億円の興行収入を獲得、日本映画界を席巻した。その上、米アカデミー賞にも輝く。これぞ、まさにベンチャーと言わずして何と言おう。天才宮崎駿を影で支える鈴木敏夫。その関係は、あの本田宗一郎と藤澤武夫の関係とどこか似ている。
※下記はベンチャー通信8号(2003年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―「千と千尋の神隠し」は空前の大ヒットを記録しました。今年の米アカデミー賞にも輝いて、ますます世間から注目が集まっていますね。

鈴木:金熊賞をもらったり、アカデミー賞をもらったりして、世間では騒がれていますが、それにいちばん戸惑っているのは僕自身なんです。僕なんか本当は、物静かに生きていきたいと思っているタイプですよ(笑)。だから取材される立場になるのは、正直しんどい。

―鈴木さんが映画に関わるきっかけは何だったんですか。

鈴木:もともとのきっかけは、少年時代に遡ります。うちの両親が大の映画好きで、親父とおふくろが別々に映画に連れて行ってくれたんです。親父が日本映画、おふくろが洋画に連れて行ってくれた。ホント見まくりましたね。最低一週間に一回は見ていましたね。当時は二本立てだったので、年間で百本は見てました。そして小学校四年生くらいからは、一人で見に行くようになった。三本立てで50円だったんですよ。毎週一回は50円を握りしめて、映画を見に行った。それが高校三年生まで続きました。今こうして映画プロデューサーをしているのも、両親の影響があったと思います。

―大学時代は何をしていたのですか。

鈴木:アルバイトばかりしてました。ありとあらゆるバイトをしてましたね。家庭教師、競輪場のガードマン、明治神宮の団子屋、渋谷の生地屋で生地の叩き売り。僕は当時、大学に行って勉強しているということにコンプレックスを持っていた。早く自分で仕事をしたい、お金を稼ぎたいと思っていたんです。だから昼間はいろんなバイトをして、夜は家庭教師をやって。働きまくってましたよ。

―就職活動でも悩んだんですか。

鈴木:それは悩みましたよ。どういう会社に行くべきか分からなかった。いくら考えても、自分が何が好きなのか分からない。そんな風にして、気が付いたら四年生の秋になってた。また大学のクラスのうち、就職が決まっていないのは僕を含めて三人になっていた。だからもう迷っている暇なんてない。自分が何をやりたいかじゃなく、自分にできることをやろう。そう考えるようになったんです。
 それで考えた末、新聞社を受けることにしました。なぜかと言うと、ちょうどその頃、バイトで原稿書きの仕事をしていて、それが割りとうまくいっていた。バイトの上司も僕の文章を褒めてくれるし、僕も文章を書くのが好きだった。それで文章をまとめたりするのは、自分は得意なのかなと思って、新聞社を受けることにしたんです。でも新聞社の試験は難しくて、よく分からなかった。結局、どこもうまくいきませんでした。
 そんなある日、徳間書店の募集が出てるのを見付けたんです。僕は週刊誌なんて読んだことがなかったけど、いちおう面接を受けてみた。そしたらいきなり面接で「キミは週刊誌を読んだことがあるのか」って聞かれる。正直に「ないです」って答えたら、「週刊誌も読んだことがないのに週刊誌の記者やるのか」って怒られた(笑)。でもそれでも採用されちゃったんですよ(笑)。

―実際に週刊誌の記者をしてみて、どうでしたか。

鈴木:面白かったですよ。僕っていう人間がいろんな人から話を聞いて、その話をなるだけ等身大で表現する。こういう仕事は自分に向いていると思った。また同時に、その頃から自分が誰かの手助けをする仕事に向いているんじゃないかと漠然と思い始めた。つまり自分自身は革新的なものを生み出すことはできないけど、人から与えられたものを工夫して世間に出す手助けはできるんじゃないかと。
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