※下記はベンチャー通信45号(2011年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―「ITバブル」と呼ばれた2000年には日本で200社以上の企業がIPO(株式上場)を果たしましたが、2010年のIPO社数はわずか22社でした。今年も30社前後と予想されています。このような日本のベンチャー業界の現状について、どのようにとらえていますか?
堀:当時の代表的ベンチャーである楽天、サイバーエージェント、USEN、GMOインターネットなどには共通の特徴がありました。それは業界経験のない人が起業して、EコマースやWeb構築など、インターネット黎明期に様々なポジションを確立したこと。その周りにネットバブルが発生したのが10年前です。一方、現在はグリーの田中さんに代表されるように、IT業界に務めた経験のある人が、洗練された知識と経験とテクノロジーをもって起業するケースが多い。ですから、事業の洗練度や起業家の実務経験は、現在の方が上回っていると思います。しかも、最初から世界を視野に入れて起業する人が増えています。たしかにIPOの件数は減っていますが、この数字は金融市場の動向によって左右されるので、あまり気にしていないですね。
田中:その一方で、大きく成長しているベンチャー企業が少ないという現実もあります。たとえば、IT分野で株式時価総額が1000億円を超えている企業を挙げると、若い会社が非常に少ない。楽天もディー・エヌ・エーもミクシィも、設立は1990年代。その中で唯一、グリーだけが2000年代中盤に設立しています。新たなビジネスチャンスは生まれているのに、新しく勃興して大規模化しているベンチャーが少ないのも事実です。ただし、これはあくまでマクロ的な視点です。自分自身のミクロ的な視点から考えれば、「株式市場が冷え込んでいる」とか「日本ではベンチャーが成長しにくい」といった外部環境は気にしていません。
―スティーブ・ジョブズが日本に生まれていたら
堀:よく「スティーブ・ジョブズが日本に生まれていたら、あのような革新的なモノは生み出せなかった」と言う人がいるけど、どう思う?
田中:そんなことはないと思います。スティーブ・ジョブズだったら、逆境でも何かできる。だからこそ、スティーブ・ジョブズなわけであって。
堀:同感です。おそらく、私たちにとっては日本の環境がまったくマイナスになっていない。これからグロービスもグリーも世界に向けて、もっともっと発信していきます。また、独自の新しいビジネスモデルという点では、アップル、グーグル、フェイスブックと比較しても、グリーは相当ユニークです。携帯電話を中心としたゲームで、ここまで売上と利益をあげて株式時価総額が急上昇した会社を私は知りません。今年になってジンガ(米ソーシャルゲーム大手)も利益が大幅に減りましたからね。これからグリーが世界展開を進めれば、グーグルやフェイスブックに続く存在になるかもしれません。もちろん、私たちグロービスも「世界の中でスゴイことを証明したい」という気持ちは相当強くもっています。田中さんもそう思っているでしょ?
田中:ええ。それと同時に、当たり前にビジネスを世界規模で考える人がもっと増えてほしいですね。やる気のある若者は増えているのですが、「国内」と「海外」といった固定観念にとらわれている。最初から日本と日本以外を分けない発想をすべきです。
堀:そのほかに、日本のメディアがベンチャー企業をもっと評価すべきだと思います。グリーもグロービスも相当ユニークなビジネスを展開していますよ。たとえば、グロービスはゼロからベンチャーキャピタルを立ち上げ、日本ナンバーワンの経営大学院とビジネススクールを創りました。これは世界的に見ても非常に珍しい。実際、海外では高く評価されていますが、日本ではそうでもない。もっと日本のメディアにベンチャー企業や起業家を注目する視座があっていい気がします。