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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社アドウェイズ HRM&PR担当 執行役員 松嶋 良治

年商300億円を超えるアフィリエイト広告のリーディングカンパニー

会社のことなんて気にするな、どう生きるかは自分で決めろ

株式会社アドウェイズ HRM&PR担当 執行役員 松嶋 良治

モバイル広告のパイオニアとして挑戦を続けるアドウェイズ。2006年には東証マザーズへ上場し、現在はアフィリエイト(成果報酬型)広告でトップシェアをほこっている。その躍進の原動力は「金儲けより人儲け」と位置づける、新卒人材の飛躍的な成長だという。そこで今回は同社のキーパーソン5名にインタビュー。まずは人事・採用のトップを務める松嶋氏に話を聞いた。
※下記はベンチャー通信58号(2014年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

上場はいつでもできる採用は手を抜いたら終わり

―御社は2014年3月期に売上高300億円を突破し、右肩上がりの成長を続けています。企業成長の大きな要因を教えてください。

 創業期から新卒採用に力を入れ続けてきた点ですね。
 私たちはインターネットという有望市場のなかで、新しいことにトライし続けてきました。そこでは常識の枠にはまらず、誰もやらないことに挑戦する姿勢が求められる。新卒社員は知識や経験がないからこそ、このマインドをもっているのです。

―どのように新卒採用に取り組んできたのですか。

 10年ほど前は体制が整っておらず、私が一手に担当して力を入れてきました。ひとりでセミナーを実施し、面接し、合否の連絡まで行う。たぶん当時の学生は「またこの人か」とうんざりしていたでしょう。
 その後、マザーズへの上場準備で多忙な時期が続きましたが、新卒採用には全力で取り組んできました。極端にいえば、いつでもIPOはできます。しかし、新卒採用を1年でも手を抜くとマーケットから脱落してしまう。だから、継続的に力を入れきたのです。
 また、一般的な採用手法では大手に負けてしまいます。そこで想いを伝えるために学生のアルバイト先に突然出向いて、その場で内定を祝福したことも。ただ、急に行くと失礼にあたるので、飲食店や書店など内定者のバイト先の店長にも協力してもらいましたね。
 そのほか地方の学生に内定を伝える際、自宅を訪問した年もありました。着ぐるみを着て出向いたときには、近所の子どもが集まってきて大変でしたよ(笑)。

―いつ頃から地方での採用を始めたのですか。

 競合他社に先駆けて、2006年から全国9ヵ所でセミナーを行いました。前年は東京・大阪でしか開催しておらず、わざわざ飛行機や夜行バスで来てくれた学生たちがいたんですよ。こんなことが続いては申しわけない。地方と東京の格差をなくしたくて、全国でセミナーを実施しました。
 当然、優秀な学生は地方にもいるので、手間も時間も費用も惜しまず各地を飛び回りました。東京には月に3日しかいないこともありましたね。
 その後、ほかのITベンチャーも地方採用を始めましたが、私たちが最初だったことが好感を集めたようです。競合が増えても、スムーズに地方での採用を進められました。

一か八かの勝負こそベンチャーの真骨頂

―御社は従業員数100名程度だった2007年に、150名もの人材を採用しました。なぜ身の丈以上の投資を決断したのですか。

 勝負を賭けるタイミングだったからです。私たちはPC広告の分野で競合他社に負けていた。だから将来有望なモバイル広告に活路を開こうと、新卒採用で一気に勝負を挑んだのです。
 たしかに翌年にリーマン・ショックが起き、会社は傾きました。「失敗だったのでは?」とよく指摘されるんですが、まったく逆です。あのときに勝負を賭けたからこそ、後にモバイルアフィリエイト広告の国内シェア1位を獲得できた。尋常じゃない危機感が生じたことで自発的に動く風土になり、会社が一気に変わったんですよ。

―会社が潰れてしまう不安はありませんでしたか。

 新卒時代の経験がなければ決断できなかったでしょうね。私は1997年に新卒でインテリジェンスへ入社したのですが、当時の従業員数は100名足らず。そのうちの約半数が同期入社だったんです。
 驚いて、当時の役員に聞きました。「急に人数を倍にして会社が潰れませんか?」と。すると「勝負を賭けてんだから潰れたっていい」と即答された。これがベンチャーの真骨頂だと思いしりましたね。
 じつは2006年にその役員と再び話す機会があったんですよ。そこで「今度150名くらい採用して勝負を賭けようと思っているんですが、危険ですかね?」と相談したら、「バカヤロー、1000人とれ!」って怒られました(笑)。

応募学生に敬意をはらいていねいな個別面接を重ねる

―当時と変わっておらず、勇気づけられたわけですね。では選考プロセスにおいて重視している点を教えてください。

 まず基本的な姿勢として、学生のみなさんに「来ていただいている」という感謝の気持ちで接することです。説明会や面接はアドウェイズを知ってもらうための貴重な機会。今回は縁がなくても、他社に入った人が「あのとき印象がよかった」と転職先として考えてくれるかもしれません。中長期的な人材確保も視野に入れ、ていねいな対応を心がけています。

―そのほかに気をつけていることはありますか。

 効率を考えないことですね。多くの企業は学生を何人か並べて、まるで流れ作業のように面接を進めがち。「そのほうが効率いいから」なんて、一緒に働く仲間を探しているのに本末転倒ですよ。
 本来、企業と学生は対等の立場であり、選考は公平にすべきです。集団面接をしたら、自分が考えていたことを先に話されてしまうことだってある。当社に興味をもってくれた学生に敬意をはらう意味でも、1対1で面接することにこだわっています。
 また、マニュアル通りの回答でなく、その人がなにをやりたいのかを公平に聞いていきたい。ホンネで話す時間も含めて、私が担当する最終面接は2時間かけています。
 最近は「選考結果をフィードバックしてほしい」という要望が増えてきたので、今年度から2次面接に進んだ学生に1次での評価内容をiPadで見せようと考えています。これもホスピタリティのひとつですね。

組織が壊れる限界まで個人の熱意を最優先

―人材育成の取り組みを教えてください。

誤解を恐れずにいえば、当社は人を育てません。たとえば、研修は最低限のベースのみ。向上心のある人は、必要な知識やスキルを自分で身につけるからです。
 よく面接で「どんな研修がありますか?」と熱心に聞いてくる学生がいますが、そういう人は「教えられていないことはできなくて当たり前」と考えやすい。当社では活躍できないでしょう。

―標準的なキャリアパスはあるのですか。

 ないですよ。キャリアパスなんて一人ひとりが考えろ、ということです。ただし、「ジョブローテーション」という仕組みは用意しています。これは、やりたい仕事があれば申請して部署を移れる制度。実力があれば、かなり高い確率で希望が通ります。
 多くの会社は個人を組織の一員としてとらえますが、アドウェイズは逆。会社の戦略に人材をハメこむのではなく、個人の熱意を優先して組織のカタチを変化させます。特定の部署に希望が偏ったとしても、組織が壊れるギリギリまでこの方針は貫きます。

―経営側としては、非常に挑戦的な取り組みです。

 私たち役員の役割は、一人ひとりの社員がベストのパフォーマンスを出すために必要な環境を整えること。効率的な人員配置や研修ではありません。  たとえば早期に海外市場を開拓できたのも、海外での仕事を希望する社員が多かったからなんです。もし役員が「まあ、そのうちに」と言葉を濁していたら、行きたい人のやる気がなくなるか、転職してしまうでしょう。「会社は海外進出を待てるかもしれないが、オレは3年キャリアが遅くなる」と考えるような人材が企業の成長スピードを加速させるのです。

―アドウェイズの海外進出は戦略ではなかったんですね。

 もともとビジョンは掲げていましたが、実行に移したのは個人です。どの分野でもそうですが、本気でやろうと思っている人は自ら選択肢を探して挑戦します。ただし、そういう姿勢の人材は多いわけではないので、可能性を最大限に探りたい。だから、当社が全国規模で採用をしているという側面もあります。
 それから、最近は降格人事を増やそうとしています。プロスポーツ選手の場合、1年も結果が出なかったらレギュラーから落ちる。でも会社員の場合、1年くらい調子が悪くても降格しない。役員や部長のポストは限られているので、上が詰まってくるわけです。
 そんな状況にイライラするような人材を当社は採用したい。だから、成果を上げれば昇格するし、ダメなら落ちるシンプルな仕組みをつくっています。

自己分析や業界研究よりも多くの説明会に参加すべき

―ベンチャーで活躍できる人材の条件を教えてください。

 まわりから「スゴい」と思われないと自分が許せない人でしょう。そのためには、自分の能力を把握して得意分野に最大限の力を注ぐ必要があります。野球であれば代走のエキスパートのように、絶対に負けない仕事をつくる。そこにプライドをもてば活躍できるはずです。

―最後に、就職活動を始める学生にアドバイスをお願いします。

 なるべく多くの説明会に足を運んでほしいですね。これだけ多数の会社の話を直接聞ける機会は最初で最後。社会人になったら、他社のことは気軽に聞けません。たとえ就職を考えていなくても、その見聞は必ず将来の役に立ちます。
 深い自己分析や業界研究に多くの時間を割く必要なんてありません。それよりも行動が先。その結果、自分の感覚で企業を選択できるようになると思います。
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